第351章 大野宏の教えを請う

「宏、入りなさい」橋本絵里子は田中勇に気づいていたが、今彼女が取り入ろうとしている大野宏のことも忘れてはいなかった。

「はい」大野宏は田中勇に意味ありげな視線を送り、笑いながら橋本家に入った。「この中庭、なかなかいいですね。橋本おじさんは橋本奈奈のために、奈奈の勉強の便宜を図って、こんな良い場所を見つけてあげたんですね」

大野宏も予想していなかったが、今日の元旦に、橋本絵里子と一緒にここに来て、田中勇と鉢合わせするとは。

田中勇が来ることを知っていれば、少なくとも別の日を選んで橋本奈奈を困らせたのに。

大野宏が元旦のような日に橋本奈奈を困らせに来たのは、すべて白洲隆のせいだった。

これまでの大野家の習慣では、大晦日は必ず家族だけで食事をする。元旦には、白洲瞳が大野青木と大野宏を連れて実家の白洲家に新年の挨拶に行くのが常だった。毎年そうで、例外はなかったが、今年に限って予想外のことが起きた。