橋本奈奈の住んでいる小さな家は大きな屋敷から遠く離れていて、慌てふためいた斎藤昇は橋本奈奈を抱えて小さな家まで送り届けた後、走って大きな屋敷に戻り、斎藤花子に助けを求めた。
斎藤花子に言われなければ、斎藤昇は斎藤花子を引っ張って一緒に小さな家まで走って戻るところだった。
これは部隊での訓練じゃないのに、なぜ長距離走?!
「……」橋本奈奈は顔を赤らめながら、急いで身の回りの問題を解決した。やはり、下着についていた生理用ナプキンは染みていた。
パンツと生理用ナプキンを斎藤さんが替えてくれたことを思い出すと、橋本奈奈はまた穴があったら入りたい気持ちになった。こんなことは、母親でさえしてくれたことがなかった。
「斎藤さん、ありがとうございました。もう大丈夫です。お正月なのに、申し訳ありません。それと、斎藤お兄さんに伝えてください。私は大丈夫だから、心配かけてごめんなさいって。」生理用ナプキンを替えた後、橋本奈奈はずっと楽になった。
「私は彼に言わないわ。まだ怒ってるもの。言いたければ自分で言ってよ。」斎藤花子は不機嫌そうに顔を横に向けた。
「何を言うの?」斎藤昇はお粥を持って入ってきた。「奈奈、目が覚めたの?お腹が空いているでしょう。お粥を飲んで。黒糖湯はまだ飲み終わってないの?」
「はい、今飲み終わりました。」斎藤昇を見て、橋本奈奈は恥ずかしそうに頭を下げ、甘くて温かい黒糖湯を一気に飲み干した。飲み終わってから、橋本奈奈は気づいて言った。「私の家には黒糖がないはずですけど。」
橋本絵里子は生理痛持ちだが、彼女はそうではなかった。
生理が始まってから一年ほど経つが、まだ不規則で、毎月ではなく、しかも毎回痛みは全くない。橋本絵里子と比べると、健康そのものだった。
そのため、この小さな家には黒糖を置いていなかった。
「もういいから、聞かないで。信じて、この黒糖がどうやって買われたか、知らない方がいいわよ。」斎藤花子は意地悪そうな目をした。大晦日の最後の一時間に、彼女だけじゃなく、暖かい布団から引っ張り出された人がいたのは幸いだった。
みんな不運だったから、不運な人が多い方が自分は気が楽だった。
「斎藤お兄さんが買ってきたの?」橋本奈奈は舌を噛みそうになった。こんなことなら聞かなければよかった。