第356章 たった4斤分の価値

この人生で、彼女は田中勇から遠ざかりたいだけだった。田中勇が橋本絵里子と仲良くしようと、他の女の子を好きになろうと、誰かと結婚しようと、彼女にはどうでもよかった。

もし、もし前世から田中勇の出現がすべて策略だったとしたら、彼女は...彼女は...

しばらく考えた後、橋本奈奈は苦々しく気づいた。彼女には退役した父親しかいないのに、田中勇には警察署長、いや今はまだ副署長の父親がいる。たとえ田中勇が最初から最後まで嘘だったと分かっても、彼女に何ができるというのか？

今日からは、田中勇に会っても疫病神のように遠ざけるしかない。

「お父さん、これいつ買ったの？どうして言ってくれなかったの」橋本絵里子は手にナツメと干しブドウを持って言った。「お父さん、これどこで買ったの？お母さんに買いに行かせたのに、こんないいものに出会えなかったのに。お父さん、私のことを考えてくれて、私の好きなものをたくさん買ってくれて。でも多すぎるわ、お父さん、このままじゃ持って帰れないわ」奈奈に残すなんて、もったいない。