第387章 こじらせた病

橋本東祐は自分でもわかっていた。橋本奈奈にそんなことを言うのは、わがまますぎると。ただ奈奈の実の父親だからこそ、そんなことが言えたのだ。

他人の前では、橋本東祐が子供のようにわがままを言って、奈奈のように自分を受け入れてもらうことなどできるはずがない。

大野宏には下心があり、橋本絵里子だって馬鹿じゃない。もう考える能力のある大人なのだ。絵里子が理解できないのは、絵里子が愚かだからで、大野宏に利用されて当然だ。しかし、現状は明らかに絵里子がこの状況を理解していながら、自ら進んで大野宏という落とし穴に飛び込んでいったのだ。

だとすれば、これからどんな結果になろうとも、絵里子の自業自得だ。

絵里子が自ら穴に飛び込みたいのなら、誰を責められようか?

橋本東祐は長いため息をついた。「私は父親として、本当に失望だ。お前が昔苦労したことを思うたびに、もう二度と失望させたくないと思うのに、実際には何度も何度も失望させてしまった。奈奈、わからないだろうが、お前の姉さんも私の娘なんだ。掌も甲も肉だ。どちらが傷ついても、私は心が痛むんだ。」