借用書の内容が完成すると、橋本東祐も無駄話をせず、伊藤佳代に渡すべきものは、絶対に引き延ばさなかった。
伊藤佳代の手が少し震えたが、それでもお金を受け取り、しっかりと握りしめた。
「今日うちに客が来てるから、あなたはここにいない方がいい。客をもてなしたいなら、自分の中庭でもてなしなさい。私も余計な口は出さない」大きな問題が解決したかのように、橋本東祐は深いため息をついた。
伊藤佳代はもちろん、橋本東祐自身も理解できなかった。良い日だったのに、どうして離婚という結末になってしまったのか。
伊藤佳代とこれほど長い間夫婦として過ごしてきて、もし彼女が改心するか、少なくとも自制できるのなら、橋本東祐はこの最後の手段、離婚という選択をする必要はなかったかもしれない。
しかし今日の伊藤佳代の行動は、正直者の橋本東祐にとって本当に耐えられないものだった。