第397章「彼」は「人」偏か「女」偏か

橋本東祐は安心し、橋本奈奈はさらに安心した。

これで、彼女は一時的に橋本絵里子と伊藤佳代のことから完全に手を離し、一心不乱に自分の学業に専念できる。

「夢子、高校二年生からクラス分けがあるけど、文系と理系どっちにするか決めた?」唐澤夢子は志望用紙を手に持ち、とても迷っていて、どちらを選ぶべきか確信が持てなかった。

「選ぶのに悩むことはないわ。数学の成績が特に優れていて、理系に興味があるなら理系を選べばいい。好きな科目があるなら文系を選べばいい」と鈴木香織は淡々と言った。

「そう簡単に言わないでよ。私みたいに文系も理系も似たような成績の人は、本当に選びにくいの」唐澤夢子は苦しそうに顔を両手で覆った。「あなたたちは知らないでしょうけど、私の両親は理系を選んでほしがってるの。数学と理科と化学をマスターすれば、どこへ行っても困らないって。でも、私には自信がないの。今の数学の成績もやっと及第点くらいで、高校二年生と三年生の数学はもっと難しくなるって聞いたから、ついていけるか心配」