立秋を過ぎた夜、暑さが和らぎ、涼風が林を抜け、窓の外で木の葉が揺れる音が聞こえる中、鐘见寧の耳には轟音のような音が響いていた。
顔を両手で包まれ、彼女は強いられるように顔を上げて彼を見た。
近すぎた。彼の瞳の奥底に渦巻く暗い色が見えるほど近く、
その瞳には彼女だけが映っていた。
先ほどのキスが激しすぎたせいか、
深すぎたせいか、
熱が体中に急速に広がり、鐘见寧の目尻は赤く染まり、瞳は潤んでいた。指先は戸惑いながら、賀川礼の腰元の服をつかみ、しわを作っていた。
足は力が抜け、彼にもたれかかるしかなかった。
「寧ちゃん、呼び方を変えてみない?」彼の息が彼女に降りかかった。
熱く、灼けるような息が、
かすかに彼女の頬を撫で、さらに赤みを増させた。
鐘见寧は唇を噛んだ。先ほどの「あなた」という呼び方も状況に迫られてのことで、まだ慣れていなかった。口を開いて、「礼」と呼んだ。