082 賀川さんのことが好き?嫉妬を認めた(2更)

二人の距離が一瞬で縮まり、近くにいた賀川野は思わず「うわっ」と声を上げそうになった。

このクソ野郎、あいつが何かやらかすと思っていた!

「兄さん、突っ込もうぜ!」

「何を突っ込むんだ」賀川礼は彼らから少し離れた場所に座った。

「兄さんが動かなくても、俺があのクソガキをぶっ潰してやる」

「落ち着けよ」

「誰かが兄さんの嫁さんを奪おうとしてるのに、そんなに冷静でいられるの?」賀川野は声を押し殺して言った。「兄さん、嫂さんがあのガキのために離婚を切り出すかもしれないんだぞ?」

「十数年の付き合いがあるんだ。あいつは今ヒーローごっこをしただけだ。恋愛は冗談じゃない」

「そうだ、家から戸籍簿持ってきたけど、入籍は済んだの?」

賀川野は何気なく尋ねた。鐘见寧と鐘見曜の方に気を取られていたからだ。

兄の表情の微妙な変化に気付かなかった。

「お前が聞くことじゃない」賀川礼の声は冷たかった。

「入籍してないなら、姉さんが彼と逃げても止められないぞ」

賀川野は兄が返事をしないのを見て。

兄を見たとき、その目に宿る冷気に背筋が凍り、すぐに大人しく座り直した。

距離が近かったため、鐘見曜の「賀川さんのことが好きなの?」という質問が聞こえてきた。

その一言で、賀川野は興味津々な表情で兄を見つめた。実際、青水市に来てから、兄嫁の口から「好き」や「愛」という言葉を聞いたことがなかった。

この二人は、一方は深く測り知れず、もう一方は内向的で恥ずかしがり屋だ。

この鐘見曜という奴は...

やるじゃないか!

現れた途端に面白い展開を見せてくれた。

賀川礼は表面上は平静を保ち、動じる様子もなかったが、指は膝を絶えずこすっていた。

彼は...

見た目ほど冷静ではなかった。

鐘见寧は彼らに背を向けていたため、賀川礼が来ているとは知らず、ただ鐘見曜の行動に驚いて「早く座りなさい、一体何がしたいの!」と言った。

「僕に対しては姉弟の情だと言うけど、じゃあ賀川さんに対してはどうなの?」

「二人の関係は取引でしょう」

賀川野は眉をひそめ、兄を見た。

取引?

兄嫁はとても仲が良いと思っていたのに。それに、兄の性格からして、好きでもない人と付き合うわけがない。

鐘见寧は彼の考えを完全に断ち切ろうと、落ち着いてコーヒーを一口飲んで言った。「取引じゃないわ」