065 彼の首に噛みついた

鐘见寧は彼に抱きしめられ、心臓が激しく鼓動するのを感じ、呼吸の中に彼の匂いが満ちていた。

その匂いは彼女の神経を思うがままに侵略し、揺さぶっていた。

彼から受ける印象は、いつも率直で、素直で……

それでいて不快感を感じさせることはなかった。

彼に恋をすること、

それはとても簡単なことだった。

おそらく心臓の鼓動が激しすぎて、頭がぼんやりしてきた。「賀川さん、今日のことで迷惑をかけてしまって、私がいなければ、鐘見月も……」

賀川礼は手を離し、彼女を見下ろした。「鐘见寧」

彼が自分の名前を呼ぶのを聞くのは久しぶりで、突然そう呼ばれて、数秒間呆然としてしまった。

「すべては君の責任ではない。罪悪感や後ろめたさを感じる必要はないんだ。前を向いて、自分が正しいと思うことをすればいい。鐘見月のような人間には慣れている。対処する方法は分かっているから、心配しなくていい」