087 結婚式の時、招待状を送るわ

結婚式?

これは鐘见寧が今まで考えたことのないことだった。

混沌とした状態で賀川礼と結婚した後、彼女は賀川家で無事に過ごし、契約期間を平穏に過ごせればそれでいいと思っていた。愛情や結婚式なんて、考える勇気もなく、お互いを敬い合えれば十分だと思っていた。

しかし、現状は彼女の予想をはるかに超えていた。

電話を切ると、車はゆっくりと鐘見家のある高級住宅地に入っていった。

ここに戻ってくると、なんとも言えない懐かしさと寂しさを感じた。

鐘見曜は彼女と同じ車に乗っていなかった。車が鐘見家の門前に着くと、運転手の木村海が振り返って彼女を見た。「私は鐘見若様と一緒に入りましょう。」

鐘见寧は頷いた。

賀川礼の下で長く働いてきた木村海は、状況を察する目を持っていた。

鐘見曜が悪意を持っているなら、養子縁組解除の件を利用して奥様を困らせることもできたはずだが、そうはしなかった。