「家族」という一言で、鐘见寧の頬が赤く染まった。
彼女はダンスを踊り終えたばかりで、息を少し切らしていた。
賀川礼は彼女を楽屋まで送らなかったが、スタッフは彼女の体調の異変に気付き、急いで近寄って医者を呼ぶ必要があるかと尋ねた。これは正式な職業競技で、専門医が待機していた。
「大丈夫です。これは持病なので」鐘见寧は丁寧に断った。
「椅子を一つ持ってきてください」賀川礼は要求を出した。
鐘见寧は椅子に座ると、右足がようやく楽になった。
彼女のバッグには常に鎮痛剤が入っていて、木村海に取りに行ってもらおうと思った矢先、賀川礼が身を屈めて膝をつき、手を伸ばして彼女の足首をマッサージし始めた。
「賀川さん……」
ここは、やはり公共の場だ。
先ほどの公演を終えたダンサーのほとんどがいて、噂を聞きつけて関係を築こうとやってきた青水市の名士も数人いた。