105 賀川さんは、家族として来た

遠くの空の果てに、月が流れる雲の下に隠れ、淡い光を放っていた。

南方に台風があり、その影響で、天気予報によると青水市では近日中に雨が降るとのことだった。鈴木最上は車を運転しながら、渋滞の合間に後部座席の人を振り返って見た。

賀川礼は椅子の背もたれに寄りかかり、目を閉じて休んでいた。

「旦那様、会場まであと40分くらいかかりそうです。奥様の試合に間に合うかどうか…」

「彼女は何番目だ?」

「全部で30人ですが、まだ抽選が終わっていません」

木村海から連絡があれば、すぐに知らせてくれるはずだった。

賀川礼は最近数日分の仕事を圧縮して、少し過負荷気味で、機嫌も悪く、鈴木最上は毎日びくびくしていた。

社長の機嫌を損ねて中秋節のボーナスが飛んでしまうのではないかと心配だった。

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