白露が空を温め、白い月が天を流れる。
賀川野は月を見上げ、兄の方をちらりと見た。兄は少し俯いていて、何を考えているのかわからないが、口元には抑えきれない笑みがあった。
彼は背筋が寒くなるのを感じた。
「兄さん...」賀川野は探るように声をかけた。「宿題があるんです。」
「宿題?」
「先生がレポートを出すように言ったんです。部屋に戻ってもいいですか。」賀川野は嘘をつき始めた。「あの先生、すごく厳しいんです。」
賀川礼は頷いた。
兄の許可を得て、賀川野は心の中で喜びが溢れた。
表面は落ち着いていて、わざとらしく「月見も一緒にしたかったんですが、先生が急いでいるので。」と言った。
「さっき何か聞こえたか?」賀川礼は彼の方を向いて、審査するような目で見た。その視線に彼は背筋が凍る思いをした。