このような良い姑がいて、長年病に苦しんでいたからこそ、江口蕴は彼女をこれ以上刺激したくなかった。
「あなたは良くやってくれました。家庭をよく世話し、晗奈もよく育ててくれて、ご苦労様。これからは、自分の望む人生を送ってください…」
江口蕴は頷いた。
「お母様が今回帰ってきて…」
家の恥を外に晒したことを責めるかと思った。
老婦人は口元に微笑みを浮かべた。「こんな恥ずかしい事が起きた以上、強引に口を塞いでも隠せるものではありません。彼が礼に手を出すなんて、骨の髄まで腐っているということです」
「彼はもう子供ではありません。根本的な部分が駄目なら、救うのは難しい」
「幸い私がまだ生きています。そうでなければ、この岸許家は彼に台無しにされていたでしょう」
「もし私が先立ってしまったら、亡き夫に顔向けできません」
彼を追い出すのは、老婦人の心も痛んだ。
しかし仕方がない、
救える人もいれば、救いたくても救えない人もいる。
老婦人は笑顔で彼女の肩を叩いた。「気持ちを整えて、顔を洗って食事に来なさい」
岸許豊令の一件で、皆の食事の雰囲気は重かった。
しかし老婦人は笑顔で皆に声をかけた。「どうしたの?みんな暗い顔して、私と食事をしたくないの?」
「いいえ、お祖母様。何も召し上がっていないので、お粥でも食べて少し胃を落ち着かせてください」江口晗奈は老婦人にお粥を注いだが、老婦人は「礼は結婚したけど、あなたはいつ彼氏を連れてくるの?」と尋ねた。
「……」
江口晗奈は固まった。
お祖母様は今まで結婚を急かしたことがなかった。どうして突然この話題を?
「縁がまだです」
「うちは本当に寂しいわね」老婦人は感慨深げに言った。
「それなら、礼と寧に催促して、曾孫か曾孫娘でも産んでもらえば、きっと賑やかになりますよ」
この言葉に、皆の視線が鐘见寧と賀川礼に集中した。
この火の手が、
どうして自分たちに飛び火したのか?
鐘见寧は耳が熱くなり、黙っていた。
むしろ賀川礼が眉を上げて、「姉さん、僕たちのことは心配しなくていい。姉さんが義兄を見つけることの方が本筋だよ」
「子供を産むのも本筋よ」
「じゃあ姉さんが産めば?」
「……」
老婦人は頭が痛くなった。
どうして子供の頃と同じように、すぐ口喧嘩を始めるのか。