彼は白いシャツと黒いズボンを着て、黒いジャケットを羽織っていた。照明が彼の肩に落ちて、銀白の月光を纏っているようだった。
いつ来たのかわからないが、長い間そこに立っていたようだ。いつもの温かく情熱的な様子とは違い、言い表せない冷たい気品があった。手には黒いバッグを持っていたが、中身は分からなかった。
江口晗奈は眉をしかめた。
なぜ彼が?
彼女は目を離さずに彼を見つめ続けた。彼が目の前まで来て、笑いかけた。「どうした?私が分からないのか?」
「なぜここにいるの?」
「友人のお見舞いだ。偶然君に会えた。暗くて、目の錯覚かと思ったよ」子犬は彼女を見つめた。「具合が悪いのか?」
彼女はまだ病衣を着ていた。
「少し怪我をしただけ。入院する必要もなかったのに」
「病室まで送ろうか?」