188 お姉さん、私を諦めるの?(2話)

樱庭司真は紫砂茶碗を手で撫でながら、淡々と「いいえ」と言った。

でも、その表情は……

極めて不自然だった。

何か言いにくいことがあるようだった。

賀川家の抜け目のない人々は、彼が何か言いづらいことがあるのを見抜いていた。

「きっと普段から忙しいのね」お婆さまは笑いながらその話題を避けた。「若く見えるわね、23、4歳かしら?」

「27です」

江口晗奈は歯を食いしばった。

まさか27歳だったなんて。あの顔があまりにも紛らわしくて、ずっと大学生だと思い込んでいた。

もしかしたら、ずっと大学から出ていなかったせいで、社会の空気に触れていないから若く見えるのかもしれない。

「若く見えますね。野くんと同じくらいの年齢かと思いました」鐘見寧は舌を打った。「そうですよね、助教になってるんだから、そんなに若いはずないですよね」