樱庭司真は紫砂茶碗を手で撫でながら、淡々と「いいえ」と言った。
でも、その表情は……
極めて不自然だった。
何か言いにくいことがあるようだった。
賀川家の抜け目のない人々は、彼が何か言いづらいことがあるのを見抜いていた。
「きっと普段から忙しいのね」お婆さまは笑いながらその話題を避けた。「若く見えるわね、23、4歳かしら?」
「27です」
江口晗奈は歯を食いしばった。
まさか27歳だったなんて。あの顔があまりにも紛らわしくて、ずっと大学生だと思い込んでいた。
もしかしたら、ずっと大学から出ていなかったせいで、社会の空気に触れていないから若く見えるのかもしれない。
「若く見えますね。野くんと同じくらいの年齢かと思いました」鐘見寧は舌を打った。「そうですよね、助教になってるんだから、そんなに若いはずないですよね」
「お姉ちゃん、彼ってどうしてこんなにかっこよくて、しかも大人しそうなの」
江口晗奈は歯を食いしばって小声で言った。「全部見せかけよ」
「何?」
「なんでもない、ちょっとお腹が空いただけ」
——
賀川家の食事はすぐに始まった。樱庭司真は初めて賀川家旧邸を訪れたので、みんな自然と彼に気を配っていた。
特に賀川宪一は、この先生に対して、まさに馬前の如く仕えていた。
彼が素晴らしいと言って、心から尊敬していた。
賀川洵はつまらなそうにしていた。途中で仕事の電話を受けたので、食事が終わりかける頃に早めに席を立った。それを見たお爺さまは眉をひそめて「あいつだけが忙しいんだ。食事すら急いで済ませる」と言った。
「あまり言わないで」お婆さまはテーブルの下で彼を蹴った。
外部の人がいるのだから、息子の面子を立てなければならない。
食事が終わったら、すぐに帰るのも失礼だ。
江口晗奈は賀川礼に外に出るよう合図した。
二人が庭に出てから、彼女はようやくお婆さまが叔母さんのために法要を営みたがっていることを伝えた。
「僕は構わないよ。お婆さまの判断に任せる」
賀川礼は彼女を見つめて「最近どう?」と尋ねた。
「別に、元気よ」
「夜、ほとんど食べてなかったじゃないか」
「……」
江口晗奈は樱庭司真を見て、本当に食べる気になれなかった。
まるで狂ってしまったみたい。
「最近ダイエット中なの」江口晗奈は適当に答えた。