一瞬にして、藤崎朗真は全身の力が抜けたように感じた。湯川俊夫は眉を上げて言った。「椅子を下ろせ!」
藤崎朗真は狂っていても、
死ぬのは怖かった!
彼は息を荒げながら、不機嫌そうに椅子を下ろした。
頭の中で様々な考えが浮かんだ。銃口を向けられ、思わず心臓の鼓動が速くなり、試すように尋ねた。「警察官ですか?」
鐘见寧はそんなに運がいいのか?
もし警察なら、今日のことは厄介なことになる。
しかし、精神疾患の診断書があるから、弁護士さえ上手く立てれば、すべてを丸く収めることができる。精神発作だったと言えば、すべては事故として片付けられる。
鐘见寧は驚いて、その場に立ち尽くした。
叔父さんの手に、なぜそんなものが。
海外ならまだしも、
国内では、銃器の所持は違法だ。
「同志、落ち着いてください。私と彼女の間には、ただの誤解があっただけです。」藤崎朗真は説明しようとした。
言葉が終わるか終わらないかのうちに、湯川俊夫は突然素早く前に出て、彼の胸を蹴った。
「誤解?」
「男女二人きりで、彼女が助けを求めているのに、それを誤解と呼ぶのか?」湯川俊夫は冷笑した。
「同志、それは状況をご存知ないからです!」藤崎朗真は説明した。「この淫売女が私を誘惑したんです!」
鐘见寧:(O_o)??
外にいた賀川野も思わず中を覗き込んだ。
こいつ何を言ってるんだ?
知的障害者か!
「なんでそんなに見物好きなんだ?」外には彼の他に、盛山庭川もいた。
横で口を塞がれ縛られている男は、冷や汗を流していた。廊下の窓際では、誰かが電話をしていたからだ。
これは……
賀川家の叔父、賀川洵!
この鐘见寧は一体何者なんだ。
どうやってこれらの大物たちをここに集めたんだ?
藤崎朗真は外の状況を知らず、湯川俊夫を警察官だと思い込み、更衣室には監視カメラもなく、彼と鐘见寧の二人きりだから、是非黒白は自分の思うがままにできると考えた。
「彼女が誘惑したと言うのか?」湯川俊夫は手の中の銃を撫でながら、もてあそんでいた。
「警察官、あなたは知らないでしょう。彼女は元々誰かに囲われている女で、こういう女は金のためなら何でもする。ただの下賤な売女です。」
「彼女は私を誘惑しておいて、今度は助けを求めている。」