ドアが閉まる音とともに、男の声が聞こえてきた。
「江口お嬢さん、どうかされましたか?」
江口晗奈が顔を上げると、金田さんが入ってくるのが見えた。彼は半分吸った煙草を咥え、驚いたような表情を浮かべながらも、目の奥には得意げな笑みを浮かべ、口角を上げながら言った。「お手伝いが必要ですか?」
「よくもそんな!」江口晗奈は歯を食いしばって言った。
彼女は必死に呼吸を整え、洗面台に背をもたせかけ、両手でバッグをしっかりと握りしめた。
「私もこうしたくはなかったんですが」金田さんは煙草を吸い、煙を吐き出した。タバコの匂いが洗面所全体に充満し、鼻を突く強い臭いとなっていた。「よく考えてみると……」
「リスクは大きいですが、成功すれば利益も大きい。」
江口晗奈は深く息を吸い、指に力を込めた。