277 この夜は狂おしく、ただの婿養子(2更)

鐘见寧はこの頃ずっと温泉山荘にいて、湯川千秋が付き添っていた。

鐘見肇の出現で驚いたため、盛山家と親しくなっても誰も疑わなかったが、その日の食事の時、湯川千秋は思いがけず義父からの電話を受けた。

「お父様」

鐘见寧は外祖父母が既に他界していることを知っていた。母のその「お父様」という呼びかけは、自分の祖父に向けられたものだろう。

「……心結を責めてはいないわ。もう過ぎたことだから」湯川千秋は笑いながら言った。「どうしたの?あの子があなたに告げ口したの?誠章と庭川に叱られたって?」

「電話で話しているうちに、突然泣き出したんだ」盛山大爺様はそれで特に状況を尋ねたのだった。

「大したことじゃないわ」

「そうか。私と母さんはしばらくしたら京都に戻るが、お前は体調が悪いんだから、無理するな。何かあったら誠章に任せなさい」