鐘见寧はこの頃ずっと温泉山荘にいて、湯川千秋が付き添っていた。
鐘見肇の出現で驚いたため、盛山家と親しくなっても誰も疑わなかったが、その日の食事の時、湯川千秋は思いがけず義父からの電話を受けた。
「お父様」
鐘见寧は外祖父母が既に他界していることを知っていた。母のその「お父様」という呼びかけは、自分の祖父に向けられたものだろう。
「……心結を責めてはいないわ。もう過ぎたことだから」湯川千秋は笑いながら言った。「どうしたの?あの子があなたに告げ口したの?誠章と庭川に叱られたって?」
「電話で話しているうちに、突然泣き出したんだ」盛山大爺様はそれで特に状況を尋ねたのだった。
「大したことじゃないわ」
「そうか。私と母さんはしばらくしたら京都に戻るが、お前は体調が悪いんだから、無理するな。何かあったら誠章に任せなさい」
「分かってます」
……
さらに世間話を少しして、湯川千秋は電話を切ったが、表情はあまり良くなかった。
鐘見肇を入れさせたのは、盛山心結の善意からではなく、明らかな悪意だった。
娘が「他界」してから、彼女は長く夏都に住んでいて、姪の盛山心結の印象は、まだ幼い頃のままだった。わがままで気まぐれなところはあったが、大した問題ではなかった。
今になって見ると、単なるわがままではすまないようだ。
盛山心結は表面上、端正で上品に見える。おそらく盛山漱花の教育の賜物だろう。しかし母親の監視から離れると、本性を現し、悪意に満ちた人間になる。
大爺様と大婆様が京都に戻ったら、また彼らの前で可哀想な振りをするに違いない。
——
日が暮れて、温泉の中
鐘见寧は乳白色の湯に浸かり、額に薄い汗が浮かんできたので上がろうとした時、振り返ると賀川礼がいつの間にか現れていて、浴衣姿で岸辺に座って彼女を見ていた。
「いつ来たの?」
「しばらく前から。君はぼんやりしていたね。何を考えていたの?」
「お祖父様とお祖母様がもうすぐ京都に戻ってくるって、母が言ってた」
「二人が君のことを気に入らないんじゃないかって心配?」
「そういう心配もあるけど、それより盛山心結がまた何か仕掛けてくるんじゃないかって。この前のことで、私、彼女の逆鱗に触れちゃったと思う」
鐘见寧が人前で彼女を非難したことで、きっと恨みを買ったはずだ。