「お母さん、お父さんと一緒に帝都に戻ってきたのに、どうして一言も言ってくれなかったの」盛山漱花は笑いながら言った。
「病院の友達があなたたちを見かけたって言うから、私は信じられなかったわ」
「お母さんは飛行機で帰国する時、高度による気圧の変化で目の神経を圧迫することを心配して、帰国後もう一度検査を受けたかったんだ。あなたが忙しいのを知っていたから、心配をかけたくなかったんだよ」と老人は言った。「知られたら心配するだろうと思ってね」
「それに旧邸は改修中で騒がしいから、私とお母さんはそこには戻らなかったんだ」
盛山漱花は微笑んで、「旧邸の工事の音はそれほど大きくないですよ、ご心配なく」
「お母さん、検査の結果はどうでしたか?」
老婦人は「目の手術後の回復は順調よ」と答えた。
「それならよかった」
「心結、座って休みなさい。ここは片付けることはそんなにないわ」老婦人は出発する時、衣類の他に特に線香を持っていった。
旧邸に戻ると、老婦人は久しぶりに湯川千秋に会い、彼女の手を取って話をした。
彼女の手首に新しい傷跡を見つけ、また心が痛んだ。
「あなたったら、なんてバカなことを!」
「お母さん、ご心配なく、もう二度としません」
「あなたはまだ若いのよ、これからの人生はまだまだ長いわ…」
老人は寡黙で、老婦人の目には嫁しか入っていなかったが、盛山漱花は特に反応を示さなかった。
そもそも最初に義姉を気に入ったのは両親で、湯川千秋にデザインの才能があったからこそ、後に兄に紹介され、この縁が結ばれたのだった。
盛世はデザインで有名で、湯川千秋はその大黒柱だった。
両親の目には、嫁は実の娘である自分よりもずっと大切な存在だった。
自分がデザインの才能を受け継がなかったせいだ。
ただ、娘と甥が同時に両親から学んでいた時、盛山庭川は早くから芸術の才能を見せていたのに対し、彼女の子供といったら…
トラブルを起こすことと、勉強がめちゃくちゃなことしかない。
「おばあちゃん、荷物の整理を手伝いましょうか」盛山心結は一生懸命に取り入ろうとした。
老婦人はただ笑顔で頷いた。
衣類以外にはあまり片付けるものはなかったが、盛山心結はその数箱の線香が気になって仕方がなく、すぐに捨ててしまった。
そのせいで、彼女が自室に戻るとすぐに、老婦人に呼び出された。