「お邪魔じゃないかしら?」老婦人は笑みを浮かべながら、とても丁寧に言った。「あなたに線香を注文したいのですが」
「はい、電話では詳しく説明できないので、お会いして詳しくお話しましょう」
鐘见寧が電話を切ると、盛山庭川はどこのおばあさんかと尋ねた。
「病院で偶然出会った方で、線香を注文したいそうです」
「スマートフォンやパソコンの使い方があまり分からないみたいで、直接会うことになりました」
「偶然?」庭川は眉を上げた。「最近は詐欺師が多いから気をつけて。特に高齢者を装った詐欺グループは要注意だ。お年寄りだと警戒心が緩むからな」
「詐欺師には見えませんでしたけど」
「詐欺師なんて顔に書いてないだろう?用心に越したことはない。一人で会うのは避けろ」やっと見つけた妹だから、庭川は特に大切にしていた。
以前誘拐されたこともあり、庭川は慎重になっていた。
鐘见寧は頷いて応じた。
「適当な返事はするな!」庭川は念を押した。
「分かってますよ〜」
「その態度じゃ全然分かってないな」
「じゃあ、会うときにお兄さんも一緒に来てください」
「いつ会う約束なんだ?」
「明日の午後です」
「じゃあ、俺も付き添おう」
「……」
鐘见寧は呆気にとられた。
兄とただの冗談のつもりだったのに、本当に行くつもりらしい。「会社は忙しくないんですか?」
「両親が戻ってきたし、最近はほとんどの顧客が母にジュエリーを注文しているから、少し暇なんだ」重要なのは面倒な叔父が帰ったことで、庭川は家の空気が以前より清々しく感じられた。
「おじいちゃんとおばあちゃんが戻ってくるのに、お屋敷の片付けは必要ないんですか?」リフォーム中だったので。
「伯母さん一家がいるから、そんなことは私が心配することじゃない」
鐘见寧は頷いて応じた。
兄と食事を終えると、江口晗奈から電話があり、夜に自宅に招待された。賀川礼と一緒に行き、果物とデザートを買って和楽園に着くと、賀川宪一、秋月策人、そして江口晗奈の友人数人がいることに気付いた。
賀川宪一が台所で手伝っている以外は、みんなトランプをしていた。
「みんな続けて、お義姉さんが来たから」今日はプライベートな集まりで、秋月策人はカジュアルな服装だった。
ただし……
花柄シャツにスーツ?