329 指輪、子供の名前まで考えていた

江口晗奈はベッドに座り、樱庭司真が去った後、家全体が静まり返った。ファンタだけが物音を聞きつけ、半開きのドアの隙間から入ってきて、彼女のベッド脇の絨毯で寝ていた。

彼女は秘書に電話をかけ、近日中の仕事をすべてキャンセルした。

明日、病院で検査を受けるつもりだった。

携帯を見ると、盛山文音が1時間前に無事に帰宅したかと尋ねていた。返信する気分ではなかったが、今になって:

【もう寝るところ。】

賀川礼は仕事の処理があり、部屋に戻ると妻がまだスマホを見ていた。

「こんな遅くまで、まだ寝ないの?」

「ちょっと考え事をしていて。」

「何を?」

「兄が近々叔父さんと食事をする約束をしたいって。私を救ってくれた恩に感謝するためだって。」

賀川礼は頷いた。「日時が決まったら教えて、一緒に行くから。」