病院内
皆が帰った後、菅野望月はしばらくスマホを見ていたが、充電器を持ってきていないことに気づいた。ナースステーションに行ってコンセントを借りようと思い、布団をめくると、スリッパすらないことに気がついた。
彼女がため息をつくと、ノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
江口晗奈が頼んだ看護師が来たのだと思った。
腕に縫合をしただけで、自分で動けないわけでもないのに、看護師なんて必要ないのに。ただ先輩に夜通し付き添われたくなかっただけなのに。
どうせ看護師が来たなら、何か買い物を頼もうかと思った。
ドアが開く音とともに、菅野望月が顔を上げると、見覚えのある姿が...
「な、なんで、あなたが?」
賀川洵は買い物袋を手に持っていた。
そのまま病室に入ってきた。
「私を見て、緊張してる?」賀川洵は無関心そうに尋ねながら、買い物袋から薄い青のスリッパを取り出して彼女の足元に置いた。