盛山家旧邸
盛山庭川は賀川洵を見ても、それほど驚かなかった。旧邸の改修工事のため、彼はすでに家の常連となっていたからだ。菅野望月が驚く間もなく、湯川千秋に手を握られていた。
「うちの寧ちゃんを助けてくれて、本当は病院にお見舞いに行くべきだったのに、私の体が言うことを聞かなくて...」湯川千秋は重い風邪を引いており、声がかすれていた。
「大丈夫です。それに毎日お弁当を作っていただいて、申し訳ありません」
「そんな他人行儀な言い方はやめてちょうだい」
盛山家の双老は彼女と話を続けた後、庭川に彼女を部屋まで送らせた。
賀川洵はもともと庭川と話をしていたので、自然と二人と一緒に歩いた。
盛山文音も一緒に行こうとしたが、叔父が行くのを見て、命の恩人のために自ら料理を作ると言って、キッチンに飛び込んだ。