348 二重人格、情を絶つ冷たい顔(2話)

彼は菅野望月の病室に誰かがいるかもしれないと分かっていた。

直感だろう。

しかし、まさか賀川洵だとは思いもよらなかった!

盛山若社長と賀川洵は業界でも有名な宿敵同士で、今は両家が姻戚関係になったため、やむを得ず和解したに過ぎない。菅野望月と彼はどうやって関係を持つようになったのか。

自分が夜に付き添うと言ったら、男女二人きりは不適切だと言った。

それなのに賀川洵とトイレで密会していた。

菅野望月は美人で、能力も高く、普段から言い寄る人がいても、みな礼儀正しく...

まさか私生活でこんな風だとは。

どうやら、誰でも受け入れるわけではなく、普段のように近寄りがたい振りをしているだけで、かなりダブルスタンダードだ。

それも当然か、相手は賀川洵なのだから。

自分なんかが彼と比べられるはずがない。

二宮一鳴は賀川洵がもう帰ったと思っていたが、帰ろうとした時、彼が書類カバンと食べ物を持って戻ってくるのを見かけた。

それ以来、

もう一度も出ていかなかった。

どうしよう?

まさか賀川洵も菅野望月のことが好きなのか?そうなると自分には全く勝ち目がない。

賀川洵のような人は、生まれた時から全てを手に入れている。釣り合いの取れる相手と結婚すべきではないのか?

——

病室内

菅野望月は携帯を手に、やみくもに動画をスクロールしながら、頭の中は賀川洵が先ほど言った言葉でいっぱいで、過去のことを思い返すと、頭が痛くなるばかりだった。

賀川洵は本当に自分のことが好きなのか、それとも「復讐」のため?

わざと自分を弄んでいるのか?

よく考える暇もないうちに、賀川洵が戻ってきた。

飴細工のりんごと、ジンジャーブレッドマンのギフトボックスを持ってきてくれた。中にはクッキーが入っていて、クリスマスツリーやトナカイ、サンタクロースなどの模様が付いていて、とても可愛らしかった。

「カフェで見かけたから、買ってきた」

菅野望月はお礼を言った。こんなに精巧で可愛いものは、食べるのがもったいない気がした。

賀川洵は彼女の心を見透かしたかのように、「食べなさい。気に入ったなら、また買ってあげる」

彼自身はサンドイッチとブラックコーヒーだけを口にして、すぐに仕事に集中し始めた。

まるで...

先ほどトイレで自分を追い詰めた人が、彼ではなかったかのように。