紫金の杯建築デザインコンテストと審査は、七時に定刻通り始まった。
司会者のウォーミングアップの後、建築協会の会長が二十分以上にわたる挨拶を行い、秋月策人は何度もあくびをしていた。この季節は、暖かい風が吹いて、眠くなるような心地よさだった。
横目で隣の賀川野を見ると、眉をひそめていた……
こいつ、なんとスマホで問題を解いているじゃないか。
「前はこんなに勉強熱心だとは気付かなかったけど?」
「元旦明けに期末試験があるから、時間がないんだ」
「前の学期、落第したの?」
「してないよ!僕を君と同じだと思わないでよ。君は学生時代によく落第したって聞いたけど」
「……」
秋月策人は軽く鼻を鳴らし、勉強に興味がなかっただけだと、またあくびをして、「そういえば、試験勉強中なのに、なぜここに来たの?賀川小野、正直に言いなさい、私の知らないことがあるんじゃないの?」