353 色欲に駆られて?横取りに来た?

賀川家旧邸

賀川礼は既に妻と帰宅し、大人の楽しみをしようとしていた矢先、シャワーを浴びたところで携帯が震え、末叔父からの電話だった。「末叔父?」

「まだ起きているのか?」

なんという無駄な質問だろう。

寝ていたら電話に出られるはずがない。

「ワインセラーに来い。話がある」

真面目な話をするならそんな場所ではないはずだが、賀川礼は盛山文音の額にキスをして言った。「眠くなったら先に寝ていいよ。末叔父と少し話があるから」

案の定、末叔父は今夜の菅野望月のことを聞きたがっていた。

「気になるなら、直接彼女に聞けばいいじゃないですか」

「あの子は恥ずかしがり屋だから、話してくれないだろう」

「……」

まるで自分が厚かましいみたいな言い方だ。賀川洵は秋月策人が菅野望月の連絡先を聞いたと知った瞬間、顔を曇らせ、賀川礼を見つめた。「お前の友達を見てみろ」

「私のせいですか?」賀川礼は低く笑った。「早く彼女を追いかければいいじゃないですか。追いかけもせず、公にもせず、菅野お嬢さんはあんなに綺麗なんだから、秋月が心を動かされても仕方ないでしょう」

「あいつが心を動かされた?」賀川洵は冷ややかに鼻を鳴らした。「ただの色目だ」

「気になるんですが、叔父さんは菅野お嬢さんに何を感じたんですか?」

賀川洵は一瞬言葉を失った。

菅野望月のあの顔は、確かに無視できないほど美しかった。

——

その時、秋月策人はベッドで寝そべりながら、突然何度もくしゃみをした。

賀川家の末叔父も今夜はどうかしている……

自分の服装が酷いからって、あんな顔をされるなんて?

友人たちに愚痴ると、みんな笑い転げてしまった。

秋月策人は人付き合いは上手いのだが、恋愛に関する感性は高くない。でなければ、あの粘り強さで江口晗奈はとっくに落としていたはずで、樱庭家の若様に先を越されることもなかっただろう。

恋愛問題になると、彼の頭は回らなくなる。

だからこそ、あの時の酔っ払いのキスの相手は……

男性ではなかったのではないか、と疑う人もいた!

彼はストレートだ。酔っ払って性的指向が変わるはずがない。男性に執着してキスするなんてありえない。

みんなは遠回しに注意を促した:【菅野お嬢さんは盛山若社長の後輩で、奥様の命の恩人でもある。今後の関係がこじれたら、面倒なことになりますよ】