盛山庭川は眉をひそめ、「秋月のやつ、どうしたんだ?いつから月ちゃんのことを好きになったんだ?」
賀川洵は黙っていた。
その時、秋月策人はバラの花束を抱えて、春風のように微笑んでいたが、菅野望月の次の言葉で、まるで冷水を浴びせられたかのようになった。「ご厚意は嬉しいですが、申し訳ありません。この花は受け取れません」
「なぜですか?あなたは独身じゃないですか?」
「あなたのことが好きじゃないからです」
「……」
秋月策人は呆然とした。
「僕のことを知りもしないのに、どうして好きじゃないってわかるんですか?」
「あなたは私の好みのタイプじゃないからです」
「どんなタイプが好みなんですか?」
「才能のある人です」
その言葉に秋月策人は一瞬固まった。
才能?
なぜか菅野お嬢さんが遠回しに自分のことを馬鹿にしているような気がした。
「もっと接してみれば、僕のことを気に入ってもらえるかもしれません」秋月策人は諦めなかった。結局、樱庭司真もそうやって粘り強く追いかけたのだから。
「人の好みは、美的感覚と同じで、なかなか変わらないものだと思います」
なぜまた美的感覚の話になるんだ?
自分のセンスが悪いと言いたいのか?
「冗談じゃないんです。真剣に考えてください。まずは知り合って、お互いを理解し合って、それでも僕のことが好きになれないなら、友達として付き合いましょう」
秋月策人はかなり率直な性格で、だからこそ江口晗奈への想いが実らなかった後も、賀川礼と友達になれたのだ。
恋愛は強制できないものだから。
菅野望月は眉をひそめた。「実は接する必要もないんです。私はあなたに全く感情がわきません。それに、他の人との約束もありますので、あなたを受け入れることは絶対にできません」
「つまり……」
「失恋しました」
菅野望月は唇を噛んだ。「付き合ってもいないのに、失恋とは言えませんよ」
「菅野お嬢さん、そういう言い方は酷いです」
「私はただ、あなたに時間を無駄にしてほしくないだけです」
「じゃあ、この花だけでも受け取ってください。さもないとゴミ箱に捨てるしかないので」秋月策人は花束を彼女の腕に押し付け、振り返って贈り物を手に取り、まるで負け犬のように肩を落として立ち去った。