367 新年おめでとう、好き合えば十分(2)

菅野望月が個室を出ると、東西に伸びる廊下には誰もいなかった。

彼女は眉をひそめた。賀川洵は彼女をからかっているのだろうか。戻ろうとした瞬間、隣の個室のドアが突然開き、一本の手が伸びてきて、彼女の手首を掴み、暗闇の中へ引きずり込んだ……

——

菅野望月の呼吸が止まりそうになった。ドアが閉まった瞬間、床から天井までの窓から差し込むネオンの光だけが、部屋を異様に艶めかしく照らしていた。

心臓が激しく鼓動を打ち、ドクドクと。

心臓が力強く、彼女を打ちつけ続けた。

あの馴染みのある香りを嗅ぐまで、彼女はようやく少し安心した。菅野望月は彼にドアに押し付けられ、賀川洵は両手で彼女の体の両側を支えていた。

首を曲げ、頭を下げ……息が彼女の顔にかかる。

軽く、熱く。

彼女は手を伸ばし、彼を押しのけようとしたが、胸に置いた両手は彼に押さえつけられた。

服越しでも、脈打つ心臓の鼓動が感じられるようだった。

手のひらが次第に熱くなってきた。

「三日経った」

「え?」

「三日も会えなかった」賀川洵は最近盛山家に行っていない。盛山庭川に会うのを避けていたのだ。

彼は盛山庭川を恐れているわけではない。ただ、あいつの機嫌が悪ければ、きっと菅野望月の気分にも影響するだろう。

彼は少し顔を傾け、唇が彼女の耳にほとんど触れそうになるほど近づき、熱い息を吹きかけた。彼女は体を縮め、軽く震えた。異様な感覚が足の裏から広がり、体が自分のものではないかのように柔らかくなった。

彼の唇が少しずつ移動し、彼女の白い頬から始まり、少しずつ擦り寄せていく……

「数日会えなかったけど、僕のこと考えた?」鼻先で擦りながら、肌が軽く触れ合い、心を揺さぶる。「ん?考えた?」

「考えてない」

菅野望月は抵抗し、全身が熱を帯びたようだった。

「先輩、盛山社長たちがまだ隣にいます」菅野望月は眉をひそめた。

「ここは防音がしっかりしてる」

「……」

彼女が言いたかったのはそういう問題ではない。

賀川洵はこの時すでに二歩後ろに下がり、電気をつけた。「最近、盛山庭川に困らされてない?」

「ないです」

ただの先輩だから、彼女のことをそこまで管理できないことが、盛山庭川を憂鬱にさせていた。

重要なのは、先生が後で彼に電話をかけ、事の真相を確認したことだ。

老人は本当に喜んでいた。