食事が終わると、賀川洵は自ら皿洗いを引き受けた。菅野お母さんは少し離れたところから見ていた。彼女は、このような裕福な家庭の坊ちゃまは、きっと家に家政婦さんがいて、食器用洗剤にも触れたことがないだろうと思っていた。
しかし、彼の動きを見ると、初めて皿を洗っているようには見えなかった。
そう見ると、傲慢で怠惰な人ではなさそうだ。
結局のところ、謙虚さや気遣いは演技できるが、実際の作業となると、手を動かせば初めてかどうかすぐにわかるものだ。
菅野両親が帝都に来たばかりで休息も必要だろうと考え、賀川洵はマンションに長居はしなかった。
「月ちゃん、送ってあげなさい」と菅野お母さんが娘を促した。
「いいえ、外は寒いですから、彼女にはご両親とゆっくり話をさせてあげましょう」
賀川洵は幼い頃から人に取り入る必要がなかった。