食事が終わると、賀川洵は自ら皿洗いを引き受けた。菅野お母さんは少し離れたところから見ていた。彼女は、このような裕福な家庭の坊ちゃまは、きっと家に家政婦さんがいて、食器用洗剤にも触れたことがないだろうと思っていた。
しかし、彼の動きを見ると、初めて皿を洗っているようには見えなかった。
そう見ると、傲慢で怠惰な人ではなさそうだ。
結局のところ、謙虚さや気遣いは演技できるが、実際の作業となると、手を動かせば初めてかどうかすぐにわかるものだ。
菅野両親が帝都に来たばかりで休息も必要だろうと考え、賀川洵はマンションに長居はしなかった。
「月ちゃん、送ってあげなさい」と菅野お母さんが娘を促した。
「いいえ、外は寒いですから、彼女にはご両親とゆっくり話をさせてあげましょう」
賀川洵は幼い頃から人に取り入る必要がなかった。
しかし、それができないというわけではない。
とにかく、一回の食事で、菅野望月は両親の心が彼に魅了されてしまったと感じた。
——
賀川家旧邸
賀川洵が戻ったとき、珍しいことに、ほぼ全員が揃っていた。賀川家では賀川礼と盛山文音の結婚式の招待客リストを検討中で、長らく慶事がなかったため、老人は親戚友人を全員招待したいと考えていた。
「やっと帰ってきたか」と賀川様が軽く鼻を鳴らした。
普段なら、賀川洵は父親を無視して直接部屋に戻るか、
あるいは反論を二言三言返すところだった。
今日は珍しく、笑顔で座り、昔の祝儀帳を手に取って眺め始めた。
「叔父さん、今夜は機嫌がいいですね。何か良いことでもあったんですか?」賀川野は勘が鋭かった。「望月さんとの進展でも?デートを承諾してもらえたとか?」
「名分もない野男だ、どこがデートだ」と賀川様が冷ややかに鼻を鳴らした。
「お父さん、彼女が付き合うことを承諾してくれました」
賀川様は「……」
賀川野はすぐに近寄って、「おめでとうございます叔父さん。叔父さんと望月さんが一緒になるのは時間の問題だと思っていました」
「後でお祝いをあげよう」
老人は数秒間呆然として、「賀川洵、お前、私を騙しているんじゃないだろうな」
賀川洵は立ち上がり、部屋に戻る前にもう一言付け加えた。「そうそう、今日はご両親にも会ってきました。今のところ順調です」
賀川家全員は「……」