賀川洵は、ゴミ箱の中で丸められたデザイン案を見ながら、口角を軽く上げた。「こんなに長く描いたのに、一箇所の破損で捨てるの?本当にいいの?」
賀川礼は低く笑った。「一箇所の破損でも、私にとっては無駄な原稿だ」
林昊洋の件と同じように、菅野望月のためだけじゃない。
それは彼が……
越権したからだ。
賀川洵は話しながら、賀川礼が持ってきたコーヒーを手に取り、眉をしかめた。「最近暇なのか?」
コーヒーを飲むのに、ラテアートなんかして。
「まあまあです」
賀川礼は最近、めでたい事があって上機嫌だった。結婚式が近いこともあり、出て行く前にこう言った。「ラテアートは元々寧ちゃんのために作ったんです。彼女がクリスマスツリーを作りたがって、このカップは失敗作だったので、無駄にしたくなくて、あなたに差し上げました」