372 賀川さん:寧ちゃん、子供を作ろう

賀川洵は、ゴミ箱の中で丸められたデザイン案を見ながら、口角を軽く上げた。「こんなに長く描いたのに、一箇所の破損で捨てるの?本当にいいの?」

賀川礼は低く笑った。「一箇所の破損でも、私にとっては無駄な原稿だ」

林昊洋の件と同じように、菅野望月のためだけじゃない。

それは彼が……

越権したからだ。

賀川洵は話しながら、賀川礼が持ってきたコーヒーを手に取り、眉をしかめた。「最近暇なのか?」

コーヒーを飲むのに、ラテアートなんかして。

「まあまあです」

賀川礼は最近、めでたい事があって上機嫌だった。結婚式が近いこともあり、出て行く前にこう言った。「ラテアートは元々寧ちゃんのために作ったんです。彼女がクリスマスツリーを作りたがって、このカップは失敗作だったので、無駄にしたくなくて、あなたに差し上げました」