373 気にするな、その娘はもう恋人がいる!(2話目)

盛山文音がその娘が婚約したことを感慨深く思っていた時……

「ママ、私もこのネックレス気に入った」横にいた女の子が甘えた声で言った。

「今日はお姉ちゃんの婚約式用のアクセサリーを選びに来たの。余計なことを言わないで」

「お姉ちゃん、私本当に欲しいの。譲ってくれない?」

その娘が口を開く前に、婦人がため息をつきながら「いいわよ、あなたが欲しいなら上げるわ。お姉ちゃんは気にしないでしょう」

「お姉ちゃん、ありがとう」

「他に好きなものがあったら見てみなさい」

「このブレスレットも素敵だわ。お姉ちゃんの婚約式の時、ドレスに合わせて着けられそう。どう思う?」

「いいわね」

「……」

その娘は、終始無言だった。

操り人形のように従順で上品だった。

知らない人が見たら、今日の主役は別の娘だと思うだろう。