盛山文音がその娘が婚約したことを感慨深く思っていた時……
「ママ、私もこのネックレス気に入った」横にいた女の子が甘えた声で言った。
「今日はお姉ちゃんの婚約式用のアクセサリーを選びに来たの。余計なことを言わないで」
「お姉ちゃん、私本当に欲しいの。譲ってくれない?」
その娘が口を開く前に、婦人がため息をつきながら「いいわよ、あなたが欲しいなら上げるわ。お姉ちゃんは気にしないでしょう」
「お姉ちゃん、ありがとう」
「他に好きなものがあったら見てみなさい」
「このブレスレットも素敵だわ。お姉ちゃんの婚約式の時、ドレスに合わせて着けられそう。どう思う?」
「いいわね」
「……」
その娘は、終始無言だった。
操り人形のように従順で上品だった。
知らない人が見たら、今日の主役は別の娘だと思うだろう。