菅野望月は自ら階下に降りて盛山庭川を迎えた。二人がアパートに入ると、彼は昔の宿敵が今やエプロンを着けて料理をしているのを一目で見つけた。
その顔だけを見れば、気品があり傲慢な様子だが、手には包丁を持ち、手際よく魚を捌いていた。
彼が部屋に入ってくるのを見て、丁寧に頷いて挨拶とした。
盛山庭川は心の中で思った:
恋とは、
本当に不思議なものだ。
賀川洵のような人物までもがエプロンを着けて、料理を作ろうとするなんて。
「おじさん、おばさん」考えながら、彼は視線を戻し、菅野両親に丁寧に挨拶した。
「久しぶりだね。前に会ったのは、もう何年も前のことだ」菅野パパは笑って言った。「うちの月ちゃんがこの間お世話になりました」
「いえいえ、とんでもありません。月ちゃんは私の妹を救ってくれた恩人です。どれだけお礼を申し上げても足りないくらいです。両親も実はご自宅にお招きしたいと思っていたのですが、最近家のことが色々と…」