壁一面の巨大なスクリーンは、視覚的なインパクトが想像以上だった。
会場の人々は息を飲み、賀川野は目を疑った。
なんてこった。
こんなものを無料で見られるとは。
いや、これは共有しないと。
賀川野は手に持っていた携帯で、すぐに録画を始めた。
盛山文音はお茶を飲んでいたが、この光景に手が震え、ドレスにお茶をこぼしてしまった。シミができて、拭いても取れない。
「着替えますか?」盛山庭川が気づいて、小声で尋ねた。
「今はいいわ」
盛山文音は目の前の出来事に夢中で、服のことなど気にしている場合ではなかった。
「あれは金子若様と松本次女様ですよね?」会場は既に騒然となっていた。
「マジかよ、トイレで、そんなに欲求不満だったのか?」
「ホテルで見つかったのは偶然だって言ってたじゃないか?」
「そんな嘘を信じるやつがいるのか?私はずっと気づいていたわ。あの松本次女様は生意気よ。姉の婚約パーティーなのに、あんな派手な格好で誰に見せたいのよ。絶対に目立とうとしてるわ!」
……
今日の出席者は、来賓を含め、帝都の顔役ばかりだった。
あちこちで様々な噂が飛び交っていた。
金子、松本両家は呆然として、状況を把握できないでいた。そしてビデオは突然終わり、【ご婚約おめでとう】の文字に切り替わった。この状況では、皮肉としか思えなかった。
「これはどういうことなの!」金子奥様は完全に激怒した。
松本雨音は苦笑いを浮かべながら、顔面蒼白の松本咲良を見つめた。「妹、これが私への婚約祝いのプレゼントだったの?」
「違う、違うの……」
松本咲良の頭は真っ白になり、周りの嘲笑と罵声が、棘のある蔓のように彼女を締め付けた。
息もできず、考えることさえできなかった。
「異母姉妹だけど、私はずっとあなたを本当の妹として愛してきた。この前、隼人とは何もないって言ったでしょう?ホテルでは単なる会話で、私の婚約パーティーのサプライズを準備していただけだって」
「これがあなたたちのサプライズだったのね!」
「私が隼人をどれだけ愛しているか知っているのに、あなたは彼と関係を持って、さらに私の婚約パーティーを台無しにしようとした。私をそこまで破滅させたかったの?」
松本雨音は唇を噛みしめ、目に涙を浮かべた。
その姿は、とても哀れに見えた。