396 見世物(2)渣男と悪女を平手打ち、まだ後手がある

壁一面の巨大なスクリーンは、視覚的なインパクトが想像以上だった。

会場の人々は息を飲み、賀川野は目を疑った。

なんてこった。

こんなものを無料で見られるとは。

いや、これは共有しないと。

賀川野は手に持っていた携帯で、すぐに録画を始めた。

盛山文音はお茶を飲んでいたが、この光景に手が震え、ドレスにお茶をこぼしてしまった。シミができて、拭いても取れない。

「着替えますか?」盛山庭川が気づいて、小声で尋ねた。

「今はいいわ」

盛山文音は目の前の出来事に夢中で、服のことなど気にしている場合ではなかった。

「あれは金子若様と松本次女様ですよね?」会場は既に騒然となっていた。

「マジかよ、トイレで、そんなに欲求不満だったのか?」

「ホテルで見つかったのは偶然だって言ってたじゃないか?」

「そんな嘘を信じるやつがいるのか?私はずっと気づいていたわ。あの松本次女様は生意気よ。姉の婚約パーティーなのに、あんな派手な格好で誰に見せたいのよ。絶対に目立とうとしてるわ!」

……

今日の出席者は、来賓を含め、帝都の顔役ばかりだった。

あちこちで様々な噂が飛び交っていた。

金子、松本両家は呆然として、状況を把握できないでいた。そしてビデオは突然終わり、【ご婚約おめでとう】の文字に切り替わった。この状況では、皮肉としか思えなかった。

「これはどういうことなの!」金子奥様は完全に激怒した。

松本雨音は苦笑いを浮かべながら、顔面蒼白の松本咲良を見つめた。「妹、これが私への婚約祝いのプレゼントだったの?」

「違う、違うの……」

松本咲良の頭は真っ白になり、周りの嘲笑と罵声が、棘のある蔓のように彼女を締め付けた。

息もできず、考えることさえできなかった。

「異母姉妹だけど、私はずっとあなたを本当の妹として愛してきた。この前、隼人とは何もないって言ったでしょう?ホテルでは単なる会話で、私の婚約パーティーのサプライズを準備していただけだって」

「これがあなたたちのサプライズだったのね!」

「私が隼人をどれだけ愛しているか知っているのに、あなたは彼と関係を持って、さらに私の婚約パーティーを台無しにしようとした。私をそこまで破滅させたかったの?」

松本雨音は唇を噛みしめ、目に涙を浮かべた。

その姿は、とても哀れに見えた。