406 賀川さん、妊娠していますよ……（5更）

警官は松本咲良の顔を見た。その顔は殴られてめちゃくちゃになっていた。

「これはどういうことだ？」

「警官さん、彼女は不注意で転んだだけです」木村海は堂々と言い放った。

「転んだ？」

警官は周りの人々を見回した。松本咲良の実の両親でさえ口を開く勇気がなく、参列者たちはなおさら賀川礼の機嫌を損ねるようなことはしたくなかった。

「通報があった。署まで来てもらおう」警官は事件の詳細は語らず、松本咲良を連行しようとした。

彼女は当然抵抗したが、口は殴られて血だらけで、言葉を発することができなかった。

涙でぐしゃぐしゃの顔で、両親に助けを求めた。

羽沢彩乃は夫を引っ張って、松本和彦に松本雨音を探してくるよう頼むしかなかった。

この件で、彼女は被害者なのだ。

もし彼女が和解に応じて、誤解だったと言えば、警察署で形式的な手続きを済ませるだけで、この件は終わるかもしれない。

「雨音……」松本和彦は声を押し殺して言った。「父さんからのお願いだ。彼女はお前の妹だ。たとえ間違いを犯したとしても、家族なんだから」

「助けたくないわけじゃないの。でも、私にはどうすることもできないの」

「お前が被害者じゃないのか？お前が通報したんじゃないのか？どうして何もできないんだ？」

松本雨音は唇を噛んだ。賀川礼と盛山庭川は明らかに盛山文音を巻き込みたくなかったが、事が警察署に及んでは、父はいずれ知ることになる。

彼女は声を潜めて「通報したのは……」

「賀川さんです」

松本和彦の瞳孔が震えた。「どういうことだ？」

「賀川さんの服が汚れたので、私が服を貸したの。松本咲良が送り込んだ男が人違いをして、だから被害者は私じゃないの」

「……」松本和彦は息を荒くした。

まるで一瞬のうちに喉を締め付けられたかのように、再び賀川礼と盛山庭川を見つめると、呼吸さえ困難に感じた。

「感謝すべきよ。賀川さんが無事だったから。もし違っていたら……」

「今夜、賀川さんと盛山若社長は松本家を根こそぎにできたはずよ！」

松本和彦は全身の血が沸き立つように感じ、手足がしびれた。

「和彦、何か言ってよ。咲良が連れて行かれちゃうわ。どうしたらいいの！」羽沢彩乃は焦りきっていた。

「黙れ！お前が甘やかすから、あいつはこんな大事を起こすんだ！」松本和彦は妻を振り払い、怒りで体を震わせた。