400 願いが叶うことを祝い、危機に陥る

休憩室にて

盛山庭川は落ち着いた様子で、月を掴み風を背負うような高貴な態度を見せていた。

お茶を飲みながら、窓に目を向け、街の灯りを眺めているようだった。向かいのガラス越しに、松本雨音が彼を盗み見ているのがはっきりと分かった。

躊躇い、迷い、

明らかに何か言いたいことがあるようだった。

先ほどの婚約パーティーで、彼女は悲しげで物憂げな表情を浮かべ、月が落ち花が折れるような様子で、その場にいた全員の同情を買っていた。

みんな彼女が恋愛脳で裏切られたと思っていた。

松本咲良が今後金子家に嫁いだとしても、金子奥様は彼女を許さないだろう。

しかし彼女が口を開く前に、携帯が振動し、着信を見て表情が少し変わった。「もしもし、お父さん?」

「一階の宴会場の一番右側のVIPルームにいる。ちょっと来てくれ」

言い終わると、電話は切れた。

「盛山若社長、少し用事がありまして、先に失礼させていただきます...」

彼女が立ち上がると、盛山庭川も立ち上がり、彼女の前まで歩み寄り、ポケットからサファイアのブレスレットを取り出して彼女に渡した。

「このプレゼントは高価すぎますし、今日の婚約パーティーの主役は私ではありませんから」

盛山庭川は何も言わず、ただ彼女の左手を取り上げた。彼の指先には薄い茧があるのが明らかに感じられ、指先は温かく、手首を支えられた感触は優しく丁寧だった。

まるで大切に、重要に扱われているような感覚だった。

彼は彼女の手首にブレスレットを付け、留め金を留める時、指が彼女の手首を軽く撫でた。

熱い感覚が走る。

「一度贈ったものを取り返すわけにはいかない」ブレスレットを付け終わると、盛山庭川は自然に手を引っ込めた。「松本さんは肌が白いから、サファイアがよく似合う」

「婚約は成立しませんでしたが、このプレゼントは松本さんへのお祝いとして...」

「願いが叶い、自由を取り戻せたことのお祝いとして」

これは確かに松本雨音の望みだったが、盛山庭川にそうはっきりと言われると、心臓がドキリとした。

やはり彼は...

すべてを見透かしていた。