翌日
松本雨音は携帯の着信音で目を覚ました。毎日花屋に定時に行くのだが、ぼんやりと目を開けた時、ホテルで寝ていることに気づいて驚いた。
二日酔い飴を食べたせいか、頭痛はそれほどひどくなく、昨夜のことは、かすかに記憶に残っていた。
しまった……
なんで盛山庭川の前でこんなに酒を飲んでしまったの!
彼女は携帯を手に取り、時間を確認しようとしたが、深夜2時過ぎに送金した銀行からの通知を見つけた。
この金額は……
なんと10万円!
これだけの花を売らないといけないのに。
WeChatを開いてみると、盛山庭川に送金していたことが分かり、昨夜の出来事が走馬灯のように頭の中を駆け巡った。
どうしよう?
このお金、返してもらえるのかな?
彼女は床のスリッパを見下ろした。ホテルの使い捨てスリッパが、なんと10万円もかかってしまった。
洗面を済ませて寝室を出ると、盛山庭川がまだいて、彼女を一瞥して「朝食を頼んであるから、一緒に食べない?」と言った。
山下助手も到着していて、元々盛山庭川の側で仕事の話をしていた。
松本雨音を見ると、脇に下がった。
松本雨音は頷いた。
彼女は盛山庭川の向かいに座り、コーヒーを一口飲みながら、視線の端で向かいの人を観察していた。
彼はウールのセーターを着ていて、くつろいだ様子で気ままな感じがした。仕草にも少し無頓着な雰囲気があり、髪も普段のようにきちんと整えられておらず、前髪が垂れて眉や目を少し隠していた。
全体的に一気に若く見えた。
自分が無理やりあのお金を受け取らせたのに、どうやって返してもらうように切り出せばいいのだろう?
この10万円は盛山庭川にとっては大したことない額だ。
でも彼女は大学に入ってから、ほとんど松本家のお金を使っていない。この10万円は簡単に得られたものではないのだ。
「昨夜のことは、本当に申し訳ありません。私、飲みすぎて、ご迷惑をおかけしました」松本雨音が先に口を開いた。
「昨日は君がおごると言っていたよね」
「はい」
「私が支払ったけど」盛山庭川は朝食を食べながら、さりげなく言った。
「……」
松本雨音は唇を噛んだ。
本当に終わった。
夕食代、ホテル代、自分が迷惑をかけたのに、もう10万円のことは言い出せない。
一回の食事で10万円!