「ぷっ——」樱庭司真は思わず、お茶をパソコンと資料に吹き出してしまい、慌てて紙を探して拭き取った。
義兄?
自分の幻聴なのか、それとも彼が狂ったのか!
賀川さんが彼のことを義兄と呼んだなんて?
確かに彼は江口晗奈と付き合って暫く経つし、準義兄と呼ばれても間違いではない。おそらく自分より年下だと思っているから、賀川礼は今まで呼び方を変えなかったのだ。
「義兄さん、いらっしゃいますか?」賀川礼は今日機嫌が良かった。
義兄という一言が何だというのか?
大したことじゃない!
「き、君は何か用?」樱庭司真は舌がもつれ始めた。
「以前整理された妊娠期の注意事項を、私にも送っていただけませんか?」
樱庭司真は彼のその義兄という呼び方に頭がくらくらして、深く考えずに資料を彼のメールアドレスに送信した。彼と盛山文音が妊活中だという噂は聞いていたし、事前に準備するのも当然だ。