「怖いの?」盛山庭川は低く掠れた声で、彼女の耳元で囁いた。
松本雨音は黙っていた。一筋の稲妻が夜空を引き裂き、一瞬の光が室内を照らした。彼女は盛山庭川の目の中の熱い眼差しをはっきりと見た。そして、彼女の赤く染まった顔は隠れる場所がなかった。
雷鳴が続いて響き、「ゴロゴロ」という音に、彼女の心臓も乱れて動揺した。
首筋を寄せ合い、熱い口づけが、彼女の体の上を少しずつ移動していく……
熱が一筋落ちて、
彼女の全身が火のように燃えた。
「怖がらなくていい。準備してないから、何もしないよ」盛山庭川はしばらくキスをしてから、笑って言った。
なぜなら……
避妊具がなかったから。
彼は松本雨音と付き合っているが、そういうことを目的としているわけではないので、当然そんなものを持ち歩くはずもなく、松本雨音に至っては、なおさら家にそういうものを用意しているはずがなかった。