「怖いの?」盛山庭川は低く掠れた声で、彼女の耳元で囁いた。
松本雨音は黙っていた。一筋の稲妻が夜空を引き裂き、一瞬の光が室内を照らした。彼女は盛山庭川の目の中の熱い眼差しをはっきりと見た。そして、彼女の赤く染まった顔は隠れる場所がなかった。
雷鳴が続いて響き、「ゴロゴロ」という音に、彼女の心臓も乱れて動揺した。
首筋を寄せ合い、熱い口づけが、彼女の体の上を少しずつ移動していく……
熱が一筋落ちて、
彼女の全身が火のように燃えた。
「怖がらなくていい。準備してないから、何もしないよ」盛山庭川はしばらくキスをしてから、笑って言った。
なぜなら……
避妊具がなかったから。
彼は松本雨音と付き合っているが、そういうことを目的としているわけではないので、当然そんなものを持ち歩くはずもなく、松本雨音に至っては、なおさら家にそういうものを用意しているはずがなかった。
盛山庭川は彼女の唇の端にキスをして、「次回にしよう。その時は準備しておくから」と言った。
松本雨音は顔を熱くしていた。
抱き合って眠る中、隣の人の体はどんどん熱くなっていった。
その後、
松本雨音は彼を手伝った。
雨は一晩中降り続け、彼女が目を覚ました時、ベランダを通りかかると昨夜取り替えたシーツが洗濯されて干してあるのを見つけた。テーブルには朝食が用意してあり、一方で元凶はとっくに逃げ出していた。
恋人同士の親密な時間には、様々な方法があるものだ。
昨夜のことを思い返すと、松本雨音は耳が熱くなり、心が落ち着かなくなった。
一ヶ月前なら、盛山庭川とこんなことをするなんて、どう考えても想像できなかっただろう。
——
療養院に着いた時は約束の時間より30分遅れていたが、思いがけず盛山文音と賀川礼もいた。今日はちょうど妊婦検診の日で、病院を出た後、ここを通りかかったので寄ってみたのだった。
「……梅の薬がとても美味しくて、この前いただいたのは、ほとんど私が食べてしまいました」
「気に入ってくれたなら、今度また作りますよ」祖母は嬉しそうに笑った。
彼女が病気で入院している間、盛山家の者についてより深く理解するようになり、性格も皆良さそうだった。孫娘が将来本当に盛山庭川と一緒になれるなら、自分が亡くなっても安心だと思った。