盛世忘年会現場
盛山誠章が壇上で挨拶し、全従業員の一年間の献身的な支援に感謝を述べ、今夜数億円の年末ボーナスを出して皆を励ますと言うと、会場は歓喜に沸いた。
湯川千秋は周りを見回しながら、息子に近づいて声を潜めて言った。「おじさんは見かけた?」
「いいえ」
「電話してみて。忘年会が始まってるのに、まだ来てないなんて、何か起きたんじゃないかしら」湯川俊夫は一人暮らしで、年も若くないため、湯川千秋は心配になった。
盛山庭川は頷き、外に出ておじに電話をかけると、渋滞で、もうすぐホテルに着くとのことだった。
そのとき、数人のホテルスタッフが料理を運びながら彼の傍を通り過ぎた。
「見た?松本長女様のお見合い相手、なんでおじさんなの?」
「お金持ちなんでしょ」
「お金持ちの家では、年の差婚って多いものよ」
……
盛山庭川が数言聞いたところで、山下助手が来て、スピーチの時間だと告げた。
「あちらを監視するように」盛山庭川は言った。
山下助手は知らんふりをして、「どちらをですか?何のことですか、よく分かりません」
盛山庭川が一瞥を投げかけると、彼は照れ笑いをして、「はい、すぐに松本さんの様子を見張らせます」
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個室にて
松本和彦と田中社長は杯を交わし、かなり飲んでいた。松本雨音と羽沢彩乃も免れず、付き合いで数杯飲んでいた。
「……私も年なので、松本さんがよろしければ、年明けにでも結婚したいと思います」田中社長が松本雨音を気に入っているのは明らかだった。
若くて美しく、品があり、話し方も優しい。
そして何より:
扱いやすそうだ!
家族の決めた見合いに応じる女性なら、きっと性格も柔らかく、将来自分の子供を虐待することもないだろう。
松本雨音は黙ったまま、恥ずかしそうに父親を見た。松本和彦は笑い出し、「ほら見てください、まだ子供なもので、結婚の話をすると恥ずかしがって。で、田中社長はいつ頃お考えですか?」
「ゴールデンウィーク前後で」
「問題ありません」
「ただ松本さんもご存知の通り、私には三人の子供がいます。上は高校生で、下はまだ幼稚園です。ですので結婚後は、家庭に重点を置いていただきたいのですが、それは大丈夫でしょうか」
松本雨音は眉をひそめた。
末っ子がまだ幼稚園とは、この田中社長もただ者ではない。