454 彼女を一歩一歩と落としていき、抗えない(2話目)

松本雨音は彼のことが好きだったので、拒むことができなかった。

彼の好き勝手にさせた。

キスが終わった時、唇の端で触れ合いながら、彼は掠れた声で言った。「昨日、君の初キスだった?」

松本雨音は何も言わず、黙って認めた。

すると彼は笑って、「偶然だね、僕も初めてだった」と言った。

その一言で、

また彼女の心臓が激しく鼓動した。

松本雨音、もうダメだ。

彼女は、あの人がツンデレで強情なところがあるから、二日ほど我慢すれば良いと思っていたのに、まさか翌日にまた彼と絡み合うことになるとは。盛山庭川は以前こんな風じゃなかったのに、告白してからは、まるで別人のようになってしまった。

もう対応しきれない。

本当に困った。

「もう遅いし、おばあさんを一人で家に置いておくのもよくないから、デザートをもう少し食べたら送っていくよ」盛山庭川は彼女の手を握ったまま離さなかった。「デザート、美味しいね」

松本雨音は黙ってうなずいた。

席に戻ってから気づいたが、盛山庭川はデザートに手をつけていなかった。

どうして美味しいと分かったの?

後になって気づいたが、おそらく彼女の口に残っていた味だったのだろう。そのせいで彼女の顔の赤みが引かず、彼女全体を艶やかで生き生きとした、色香漂う存在に見せていた。

もうデザートは食べられず、水を数口飲んで動悸を抑えようとしたが、結局トイレに行く口実を作って、やっと呼吸を整えることができた。

本当に完全に落ちてしまいそう……

彼女は手で頬を叩いて、少し冷静になろうとした。

松本雨音、落ち着いて!

ただの男の人じゃない。

でも……

初キスなのに、どうしてあんなにキスが上手いの。

手を繋ぐこと、キスすること、本当に一歩一歩と彼女を落としていく。

ホテルを出る時、山下助手は後部座席の二人の間の雰囲気が明らかに異様だと感じた。松本さんは全く自分の上司をまともに見ようとしないのに、雰囲気はどことなく甘い。二人を観察しながら、意味ありげな視線を送ると、松本雨音は咳払いをして、「お手はもう大丈夫ですか?」と聞いた。

「問題ない」盛山庭川の手は本当は痛くなかった、病院に行くのは口実に過ぎなかった。

「そうそう、羽沢彩乃が釈放されたそうです」山下助手が突然言った。

「え?」松本雨音は眉をひそめた。