イエスレデイー

「激しい戦いを経て、残った選手は三十人となりました。各グループには七人ずつ選ばれていますが、余った二人は脱落の危機に直面しています。

「今、あなたたちにはチャンスがありますが、自分の実力で指導者を説得しなければなりません。

「もし誰の指導者からもライトが点灯されなければ、残念ながら番組を去ることになります。」

「余った二人は石ちゃんと夢ちゃんです。」

夢ちゃんが立ち上がった。実に彼の本名は斎藤恒介という。

しかし、番組側は視聴者と指導者が選手の本当の姿に影響されないよう、選手全員が本名を明かすことを禁止し、それぞれがニックネームを付け、お互いをニックネームで呼び合うことにしていた。

時枝秋もここに立って、やっとそのことを思い出した。

そして、この残りの二人の選手は、どのグループも欲しがらないということも思い出した。

各グループにはすでに七人の選手がいて、彼らは自分のグループを代表して他のグループのメンバーと戦うことになる。グループ内のメンバーが多いほど、指導者の采配が難しくなり、選手たちの出場機会も少なくなり、実力を見せるチャンスも減ってしまう。

言い換えれば、これは比較的個人戦的なオーディション番組で、最終的には優勝、準優勝、三位を決めなければならないが、グループ内での協力も求められる。誰も実力の劣るチームメイトは欲しくない。

残りのこの二人は、まさに三十人の中で実力が最下位だった。

案の定、斎藤恒介のパフォーマンスが終わった後、指導者は考える時間が必要だと言い、すぐには判断を下せなかった。

「時枝秋さん、あなたの番よ。」木村雨音が時枝秋の腕を軽く突いた。

時枝秋はそこで、自分が石ちゃんだということを思い出した。

彼女はそのことをすっかり忘れかけていた。

木村雨音は時枝秋の実力がまだ不安定だと思い込みながら、「時枝秋さん、パフォーマンスの時に小林凌に甘えたり、可愛く振る舞ったりすれば、きっと残してくれるわよ。そうそう、あなた彼にラブレター書いたんでしょう?この機会に渡したら?」と「親切に」アドバイスした。

もし時枝秋がそうしたら、藤原修の怒りを買うだけでなく、小林凌のファンからひどいバッシングを受けることになるだろう。

時枝秋は前世で自分がまさにそうしたことを思い出した。十分な実力があったにもかかわらず、この機会を利用して小林凌にこっそりラブレターを渡し、番組で自分を残してくれることと、現実でも気持ちを改めてくれることを期待したのだ。

藤原修がそれを知って、激怒した。

そして小林凌のファンは時枝秋を公敵第一号に指定し、その後、これらのアンチファンは時枝秋の人生につきまとい続けた。

時枝秋は立ち上がり、カメラが彼女を追った。

これまでの番組で、彼女の映像は非常に少なかった。というのも、その頃の彼女は小林凌を追いかけることばかりで、藤原修から逃れようとしていたため、いつも非常に不適切な服装をしていたからだ。

しかし今日、彼女の服装は完全に自分らしいシンプルなスタイルで、すらりとした手足が際立ち、覗く足首は目を奪うほど白かった。

カメラは注目を集めそうな内容を見逃さず、すぐに寄っていった。

「石ちゃん、歌のパフォーマンスをするの?それとも作品を提出するの?」

カメラの前の小林凌は、話すときは特に穏やかで礼儀正しかった。

『國民シンガーソングライター』の才能は二つの部分に分かれていて、歌唱力と作曲力だ。どちらか一つを披露すれば、指導者の目に留まる可能性がある。

しかし一般的に、作曲能力の高い歌手は、歌唱力もそれほど悪くないものだ。ただ声質に違いがあるだけだ。

時枝秋は微笑んで、とても自信に満ちた様子で「作品を提出します。」と答えた。