第56章 彼女の限界はどこにあるのか

紺野広幸はイヤホンを怒って外した。

観客は確かに騒然としており、うるさかった。

今や小林凌のファンが主導権を握っているわけではなく、野次馬の観客たちだった。

一方は、これは敗者復活戦の挑戦者が、楽に省力化しようとして、卑怯な方法でこのステージに残ろうとしているだけだ、完全に策略だ!モラル崩壊だ!と主張した。

もう一方は、石ちゃんの人柄に問題があり、人付き合いが極めて悪いからこそ、こんなにも多くの人にPK対象として選ばれるのだ、さもなければ挑戦者がなぜ彼女一人だけを狙うのか?他の二十二位の挑戦者を選ばないのか?と考えていた。

騒ぎが大きくなればなるほど、番組の注目度は高まっていった。

今や、ツイッタートレンド上位10位のうち7つが、この番組に関連するものに占められていた——#石ちゃん連戦#、#ブタちゃん脱落#、#帆足脱落#、#石ちゃん圧巻#、#「國民シンガーソングライター」制度問題#などなど、枚挙にいとまがなかった。