第43章 これは生放送だ!

実際、時枝秋にとって、どちらの曲も問題なく、完全に把握していた。

しかし、堀口楓はそうではなかった。

彼女は元々緊張しやすい性格で、ステージに立つだけでも大変なのに、別の曲に変えたら、きっと発狂してしまうだろう。

案の定、堀口楓は軽く震え始め、冷や汗を流していた。

「仕事にミスがつきものでしょう?」そのスタッフは傲慢な態度で言った。「これって普通のことじゃないですか?」

番組スタッフの中には、人によって態度を変える者もいて、時枝秋と堀口楓のような人気や優勝とは無縁そうな選手に対しては、面倒を見る気も起きなかった。

特にこのスタッフは、以前時枝秋がマスクを外した時に、彼女の口元の歪んだ傷跡を一目見ただけで、

その時から極度の嫌悪感を抱いていた。

それ以来、時枝秋の仕事関連の処理も適当で、できる限り先延ばしにしていた。