彼は今やトップスターとなり、話題性は必要だが、それほど多くは必要ではない。むしろ、格の高い仕事を求め、自身の実力と品格をさらに一段階上げ、最適な形で自分のポジションを安定させることが重要だ。
時枝雪穂の水墨画の腕前は既に注目を集めており、彼女はまもなくピアノコンクールに参加し、国際大会に出場して入賞する可能性も高い。
今回のことは、彼に予想以上の高い格と品格をもたらすだろう。
そして、彼の今後のイメージチェンジの道をより一層スムーズにするだろう。
前方で愛を語り合う二人を見て、時枝秋は軽く嘲笑い、すぐに視線を外し、一瞥すら与えなかった。
しばらくすると、木村雨音も会場に現れた。
彼女は『國民シンガーソングライター』の番組から脱落して以来、ずっと心中穏やかではなかった。
岡元経理が約束した物もまだ手に入れていないため、小林凌との関係を完全に切るつもりはなかった。
今日小林凌が来るかもしれないと聞いて、彼女は早めに来ていた。
彼女は会場内の人混みの中を探し回った。
すぐに小林凌と時枝秋の方向に目を向け、詳しく観察して、彼らだと確認した。
木村雨音は不思議に思った。小林凌がオークションに関係して来るのは分かるが、時枝秋は何をしに来たのだろう?
もしかして、彼女はまだ小林凌のことを忘れられていないのか?ステージで選んだあの潔い歌詞は、ただの駆け引きだったのか?
そう考えると、彼女は素早く携帯を取り出し、藤原修のショートメール画面を開いた。
以前、彼女のWeChatアカウントは既に藤原修にブロックされていたが、どうして諦められようか?
携帯番号を変えれば藤原修にメッセージを送れる。こんな良い機会を逃すわけにはいかない。
しかし、もう少し様子を見て、時枝秋が何をしに来たのか確認しよう。
オークションが正式に始まり、小林凌と時枝雪穂は私語を止めた。
最初にオークションにかけられた様々な花や植物は、確かに高価なものばかりだったが、時枝秋は興味を示さず、一つも購入しなかった。
彼女は価格だけを確認していた。これらの花や植物は、最も高いものでも数十万円で、最高でも百万円を超えることはなかった。心の中で計算すると、自分が用意した金額で十分だろうと分かった。