第109章 票の不正操作

しかし実際には、最低のものでも他の最高のものよりも良いのだ。

彼は木村雨音を懐柔しなければならなかった。

小林凌が自分の要求を承諾したと知り、木村雨音は非常に喜んだ。

この署名権を得たことで、彼女と小林凌の結びつきはより深くなるだろう。

彼女の道のりもますます歩みやすくなるはずだ。

横澤蕾は念を押して言った:「これからいい曲は、私たちのために取っておいてくれよ。」

「もちろんです。」木村雨音はすぐに答えた。

彼女はまったく心配していなかった。時枝秋の創作能力が続く限り、彼女は絶え間なく原稿を手に入れることができるのだから。

彼女はばれることさえまったく恐れていなかった。

時枝秋が小林凌と争うはずがないじゃないか?

時枝秋は小林凌に自分の作った曲を使ってほしくてたまらないはずだ。たとえ今は嫌がっているように見えても。

しかし木村雨音は確信していた。時枝秋は小林凌のことを忘れられるはずがないと。

仮に時枝秋が後で名乗り出て、これらの曲は全部自分が書いたものだと騒いだとしても、世間はどう反応するだろう?

世間は盗作や無断使用といったことには注目しないだろう。

彼らはただ、時枝秋が小林凌への未練を断ち切れず、必死になってたくさんの曲を作って小林凌に使わせたのだと思うだけだ。

時枝秋はただ再び「恋愛脳」「ストーカー」「押しかけ女」というレッテルを貼られるだけだろう。

……

時枝秋は楽屋で真剣に戦いの準備をしていた。

これからのコンテストはより過酷になるはずだ。

残りの十一人の選手、いや、復活した木村雨音を加えて十二人の選手のうち、半分が一気に脱落し、六人だけが残ることになる。

前世で、時枝秋はこの回で脱落した。

その中には、確かに彼女自身が自滅的な行動を取ったという理由もあった。

しかし根本的には、木村雨音と重岡亜紀が関係していた。

前世の木村雨音は脱落せず、着実にこのラウンドまで進んできた。

しかし他の対戦相手があまりにも強く、時枝秋は小林凌のために、しばしば予想外の素晴らしい実力を見せ、木村雨音と重岡亜紀にとても大きなプレッシャーを与えていた。

二人はこのラウンドで、ハッカーと連絡を取り、票を買って不正投票を行い、一気に票数を伸ばした。