第113章 黒歴史は実力より多い

「まあ……実力よりもスキャンダルの方が多いわね」と安藤誠は正直に言った。「初期は小林凌とのバズりに頼り、後期もトラブルが絶えなかった。夏目休まで敵に回したしね」

彼は時枝秋について良いところを探そうとしたが、しばらく考えても見つからず、素直に事実を述べることにした。

後で重岡尚樹が具体的な状況を知った時に、落胆しないようにするためだ。

重岡尚樹は何も言わずに視線を戻した。

安藤誠は彼の冷淡な様子を見て、重岡家全体が時枝秋のような話題作りで地位を得た人物を嫌っていることを理解し、たとえ票数が多くても重岡家からの支援を得るのは難しいだろうと悟った。

そうだね、彼女がこの番組で常に人を敵に回すからね。

小林凌に嫌われるのはまだしも、夏目休のような人物まで敵に回すなんて、どうやってそんなことができたのだろう。

ステージでは、コンテストが進行中だった。

文岩薫里の演技は完璧で、重岡尚樹の目は確かに輝きを見せ、頻繁に頷いていた。

すぐに木村雨音の出番となった。

彼女の歌唱力はやや劣るものの、曲と歌詞が特に素晴らしく、重岡尚樹の表情もようやく和らいだ。

その後の他の出場者のパフォーマンスに対して、重岡尚樹は終始無表情で、安藤誠も彼が満足しているのか不満なのか分からなかった。

番組が終盤に差し掛かった頃、木村永司が投票の概況を重岡尚樹に確認させるために持ってきた。

時枝秋のプログラムのおかげで、仮想コンピューターやスマートフォンから投じられた票は、すべて別途リストアップされていた。

実際のコンピューターと携帯電話からの投票数は、もう一方に表示されていた。

異常な状況は一目瞭然だった。

すべての出場者に票数の異常は見られたが、ほとんどが最大でも数百票程度の異常で、おそらくファンが自作したものだろう。

しかし木村雨音と重岡亜紀だけは、差額が巨大で、二人の順位を直接2位と3位に押し上げるほどだった。

「重岡社長、ご覧ください……」と木村永司は小声で言った。

「石ちゃんが作ったこのプログラム、厳密なのかな?」安藤誠はこの二人の出場者をとても気に入っていたので、少し心配そうだった。

彼が真っ先にこのプログラムに問題があるのではないかと疑問を投げかけた。

木村永司も実は同じ考えだった。

このプログラムにどんな裏があるか誰にも分からないじゃないか。