園田一帆はまだ諦めきれずに言った。「それだけじゃないんです。藤原様は、男の子が初デートの時に女の子に手作り弁当を作るということを調べて、今日は自分で料理を作ったんです。自分のお昼ご飯も食べずに、あなたのために愛情たっぷりのお弁当を作ったんですよ。」
園田一帆も最初は、藤原修がこれを赤司先生のために作ったと思い、藤原様が一人の女性に縛られることがなくなったことに安堵していた。
しかし、藤原修が家で試行錯誤を重ね、時枝秋が何を好むか熟考している様子を見て、園田一帆は赤司が時枝秋だと知ることになったのだ!
ああ!
園田一帆は太ももを叩いて青あざができるほどだった。全く無駄な喜びだったとは!
「だから時枝さん、藤原様を責めないでください。真剣に準備していたから遅れただけなんです……」園田一帆は真剣に言った。
「園田!」藤原修は彼の言葉を遮った。彼の口調が強すぎたのだ。
藤原修は誰にも時枝秋をそのように言わせたくなかった。
なるほど、そういうことか。
時枝秋は藤原修を見つめた。
普段はキッチンがどこにあるかさえ知らない人が、自ら料理して愛情弁当を作るなんて。
こんなに遅れた理由が分かった。
藤原修は表情に浮かぶ緊張を隠しながら、確かに女の子とのデートで何をすべきか分からなかった。
時枝秋とも本当の意味で初めてのデートだった。
長時間準備をし、手作り弁当も作ったが、時枝秋の好みや味付けに合わないのではないかと心配だった。
そう思いながら、彼は弁当箱に手を伸ばし、引き下げようとした。
園田一帆は驚きを隠せなかった。時枝秋の前での藤原様は、まさに彼の常識を次々と覆していった!
これが、ビジネスの世界で冷徹に、企業買収の際にも一瞬の躊躇もない、あの藤原様なのか?
時枝秋にお弁当を渡すだけなのに?
こんなに臆病になる必要があるのか?
園田一帆はもう見ていられなかった!
園田一帆にも分かることは、時枝秋にも当然分かっていた。
彼女は藤原修の手を押さえ、弁当箱を受け取って開けた。
愛情弁当は確かにハート型で、藤原修が人参でささやかなバラの花を飾り付けていたのが印象的だった。
時枝秋は笑顔で弁当を取り出し、箸を取って大きく一口食べた。「藤原修、ありがとう。とても気に入ったわ。」