第156章 まだ話題に便乗し足りないの?

校長は提案と作曲の両方を手がけたのが時枝秋だと知ると、電話で何時間も話し込み、まだ話し足りない様子だった。

本来、校長は彼女を学校に招待するつもりだったが、話しているうちに考えを変えた。

ちょうどペンス教授が来校する予定だったので、校長は時枝秋に必ずペンス教授と会うように頼んだ。

そうでなければ、安藤誠と木村永司が自分のことを好ましく思っていないと分かっていながら、時枝秋がオフィスの前で待っているはずがない。

木村永司がペンス教授にコーヒーを持って入り、30分以上経って文岩薫里を呼びに出てきたとき、時枝秋がまだそこに立っているのを見かけた。

「石ちゃん、まだここで何してるの?」

「ああ、作曲してます」時枝秋は手にした楽譜を軽く振った。

「何がしたいのか分かるけど、ペンス教授は誰とでも会うわけじゃないよ」木村永司は諭すように言った。番組スタッフ全員が文岩薫里を推していて、安藤誠も含めて、今日は文岩薫里だけがペンス教授に会えることになっていた。

彼は同情的な目で時枝秋を見て言った。「作曲するなら練習室でやりなよ。ここは適切じゃない。それに、もう君はトップ3に入ってるんだから、無事に高校を卒業したら、番組側が国内の音楽学校への進学を推薦して、しっかりとした手配をしてあげるよ」

そう言って、彼は文岩薫里を呼びに行った。

文岩薫里は木村永司の後ろについて行きながら、ペンス教授に会えると聞いて、心の中で驚きと喜びが込み上げていた。

表面上は落ち着いて見えたが、両手を組み合わせて指を絡ませ続けており、明らかに興奮と緊張の様子が見て取れた。

時枝秋を見かけたとき、彼女は深く一瞥し、なぜ時枝秋がここに立っているのか不思議に思った。

彼女は小声で尋ねた。「木村さん、ペンス教授は石ちゃんにも会うんですか?」

「そういう予定はない」と木村永司は答えた。

「そうですか」文岩薫里の笑顔はさらに明るくなった。

時枝秋は目を伏せたまま、彼女を見ようとしなかった。

面会が完全に終わると、安藤誠がペンス教授と一緒に出てきた。

「ペンス教授、ローズちゃんをこれからよろしくお願いします」安藤誠は笑顔で言った。

そう言って、少し離れた場所に立つ時枝秋に気づき、思わず眉をひそめた。