耳元は騒がしい声で溢れていた。石ちゃんの得票数が発表されたのだ。
人々の驚きの声の中、紺野広幸は目を凝らして見た。時枝秋の得票数が出た。「四百七十六万五千九百四十九票!ローズちゃんよりちょうど三十九票多い!」
彼は安藤誠の方を見やった。安藤誠の表情は少し曇っていた。
時枝秋は容姿で最大のハンデを抱え、優勝の夜の直前まで最も宣伝の少ない状況だったにもかかわらず、票数で上回ったのだ!
司会者も非常に興奮していた。「皆様、現在は石ちゃんがリードしていますが、会場の審査員の投票がまだです!そのため、ここで一旦CMに入ります……」
重要な場面でCMが入り、多くの視聴者が怒りの声を上げた。
しかし、それは人々の議論を盛り上げる時間にもなった。
「石ちゃんは今回絶対勝つよ!賭けてもいい!」
「でも、聞いてなかった?審査員の投票がまだだよ!」
「最も重要でないと思われていた審査員の投票が、今や決定要因になるのか?」
「はいはい、これは番組側の作戦よ!作戦!」
「とにかく、石ちゃんが一番すごいってことは変わらないよ!」
「すごいって言うなら、あなたの石ちゃんに整形でもさせたら?」
「そうよ、今回重岡家から多くのCM契約が出てるけど、それは優勝者のものになるのよ。これからは撮影でマスクもできないでしょ。石ちゃんはスポンサーに迷惑をかけるつもり?」
……
楽屋裏では、CM中の三分間の休憩時間があった。
三分間では通常、大したことはできない。
しかし、安藤誠にとっては多くのことを手配するのに十分な時間だった。
もっとも、今回は安藤誠が特別に手配する必要もなかった。他の二人の審査員は常々文岩薫里を気に入っており、彼女は正統派で、イメージもよく、時枝秋よりもこの番組の顔として相応しいと考えていたからだ。
スキャンダルのないタレントこそが、「才能で勝負する」という言葉にふさわしい。
CMが終わり、カメラは会場に戻った。
司会者の声は震えていた。「では会場に戻りまして、審査員の投票の時間です。各審査員は二十票を持っており、どちらかの候補者に投票できます。それでは最初の審査員、伊藤早苗さんの投票をお願いします!」
最初の審査員の伊藤早苗は自分の票を示した。「私の全ての票をローズちゃんに投票します。」